半月版損傷でも9時間歩いた。
山小屋の前のテラスはまるで宙に出てるかのようで手摺りから恐る恐る下を覗くとウワッ、絶壁だ。よくもまあこんなところに建築したもんだ。
割り当てられた寝室は、上下2段式の階下。ここで装備を解きやっとくつろいだ。周りでくつろいでいる人たちは、全国あちこちから来ているようだ。しばし、仮眠を取る。
夕食は豪華版でステーキからデザートまであった。しかもクラシックがながされての食事だ。私の前に座ったおじさんはステーキが嫌いみたいで、奥さんにあげて野菜ばかり食べていた。こんな弱そうな人でも登ってきたんだなあ。
食事のあと、星を見ようと外に出てみたけど、ガスでなにも見えなかった。台風が接近してきているらしい。
夜中は外の風の音がすごくて、まるで下界の、台風の通過中の時のようなすごい吹き方に感じられた。心配で外に出てみるとたいしたこともない。そうか、ここは3100mの頂上だから風の音も毎日こんな風に聞こえてるんだろうな。それにしてもすごい風の音だよ。
朝、日の出を楽しみにしてたけど、ガスってダメだった。ほんの一時、曙が見えただけ。
ケーブルテレビだろうと思うけど、ずうっと全国の詳しい天気予報を放送し続けている。松本地方の今日の天気予報は台風の接近で曇り。そとはガスって雲の流れが速い。さーてどうしようか。すぐに下山しようか。様子を見ようか。もう1泊して台風が去ってから下山しようか・・・。そとはだんだんひどくなりそうだし・・・。
食堂でたむろしている人たちと雑談して時を過ごした。神戸から来た中年男がタバコ吸いながら乾く口中をビールをすすってごまかしつつ、人懐っこい関西弁で会話を盛り上げている。どーしよーかなあ、下山しようか、待とうか・・・。決断が出来ない。そのうち石川県から来たというおばさんたち2人が、一緒に下りてみようという話になったので、下山することにした。北海道から来た男性も同行することになり、5人で勇気出して7時に下山開始。
南峰のテラスあたりを下っていると、下から男が一人登って来た。それがザックも帽子も付けて無い。なんだこりゃ?そばに来て話をしてみたら、財布を捜しに来たというんだ。あっけにとられたまま別れて下山する途中、右足でゴロ石を転がして尻餅をついてしまった。その時、右ひざが痛んだ。
それまで、皆の先頭を歩いて、「ここに浮石があるから気をつけてー」などと言って注意をしていたのに、さっきの変な親父の出現で余計なことを考えてしまい、足元に注意が行かなくなったとたん、転んでしまった。これを隙が出来た、と言うんだね。しまったー。
平気を装い、多少の痛みを我慢して涸沢まで下りて、涸沢小屋で持参していた湿布をひざに貼った。涸沢小屋では無線交信が聞こえていて、「50代女性頭部裂傷、重症、ただ今収容」などと聞こえてくる。涸沢岳の方でヘリがバタバタ飛んでいるのが見える。やがてヘリは涸沢に降りてきて、吊り下げてきた遭難者を機内に収容し直し、再びどこかへ飛び去って行った。
涸沢小屋で1時間休憩してソフトクリームを食べたり、5人で記念写真を撮ったりしてから、別れてそれぞれがまた更に下山した。私たちは、横尾山荘によって前日の弁当をもらい、上高地まで更に歩いた。上高地から6時半の最終バスに間に合うように急いだ。
夕方6時、やっと上高地に到着した。今日はよく歩いたなあ。
シャトルバスの窓から景色を眺めつつ、またいつか必ず来るからな、と心のなかで誓った。このあと、沢渡の上高地ホテルで入浴だけを提供してもらって、3日間の汗を洗い流し、夜の11時に、やっとこさっとこ自宅に辿り着いた。達成感は自宅でゆっくり味わった。やったぞー!
翌日接骨院に行ったら、半月版損傷とのこと。これはアスリートに多い怪我だというんだ。おー、まるで貴乃花みたいじゃないの。ケガは手術しないで、湿布しながら自然回復をはかることになった。10月の市民運動会では軽く走れるように回復し、年末までには完治した。これで私もアスリートの仲間入りさ。エッヘッヘッー。(*^_^*) (おしまい)
| 固定リンク



コメント
一つひとつ難関を乗り越え目的に立ち向かう姿はすばらしいです。私は山を征服するという趣味はなかったのですがそれとなく感銘を受けました。いざというときには退散も自信をもって行うというところがすごいです。
人生を考えるとき、自分自身の趣味というかサイドワークというか、そういったものから与えられるものは大きいと、つくづく感じます。
投稿: カンチャン | 2006年8月14日 (月) 19時41分
それほどのことではありません。なんせ、計画したら実行しなきゃならなくなり、出掛けたら目的地まで行かなきゃならなくなるので、歩いていくしかないんですよ。行けばなんとかなっちゃうんだね。ただそれだけですよ。(^_-)-☆
投稿: 悠さん | 2006年8月14日 (月) 21時40分